【新車ディーラー経営者様へ】採用ブランディング完全ガイド|応募が集まる会社の作り方

新車ディーラー経営者 採用ブランディング 解説 応募が集まる会社の作り方

こんにちは、自動車業界専門の採用コンサルタント野瀬貴士です。

「若手の応募が全く来ない…」
「採用しても、すぐに辞めてしまう…」
「『ディーラーの仕事はきつい』というイメージをどうにかしたい」

新車ディーラーの経営者や採用担当者様の中には、このような根深い悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
従来の求人広告に多額の費用を投じても、効果は限定的。
そんな厳しい採用市場で競争力を高める鍵こそが、「採用ブランディング」です。

本記事では、採用ブランディングの基本から、新車ディーラー業界に特化した具体的な戦略、成功事例、さらには実践的なテクニックまでを網羅的に解説します。


この記事を読めば、貴社の魅力を最大限に引き出し、理想の人材から「選ばれる」ための、持続可能な採用の仕組みを構築する第一歩が踏み出せるはずです。

なぜ今、新車ディーラーに採用ブランディングが必要なのか?

現代の採用市場は、新車ディーラーにとって非常に厳しい逆風が吹いています。
若者の車に対する価値観の変化や、業界全体に根付くネガティブなイメージなど、個々の企業の努力だけでは乗り越えがたい課題が山積しています。

このような状況下で、従来と同じ採用手法を続けていては、人材獲得競争で勝ち抜くことはますます困難になるでしょう。
だからこそ今、自社の魅力を再定義し、ターゲットに的確に届ける「採用ブランディング」という戦略的なアプローチが不可欠なのです。

課題1:若者の車離れと労働人口の減少という逆風

現代の日本では、若者を中心に自動車を所有する価値観が変化しています。
公共交通機関が発達した都市部ではもちろん、地方においてもその傾向は無視できません。

  • 若者の自動車保有率の低下
    • 20代の自動車保有率は、この10年間で15%も低下しています。
    • これにより、自動車業界そのものへの関心が薄れ、新卒採用における応募者数が平均で20%減少するという直接的な影響が出ています。
  • 労働人口の減少
    • 日本全体の労働人口が減少する中、特に地方のディーラーでは都市部への人口流出も相まって、人材確保が極めて困難になっています。
    • 地域によっては、採用競争率が3倍にまで上昇しているというデータもあります。

このようなマクロな環境変化は、採用コストの増大を招き、経営を圧迫する要因となっています。

関連記事:中途採用で営業即戦力を確保する!ディーラー採用成功のポイント

課題2:「きつい・休めない」業界のネガティブイメージ

自動車ディーラーの仕事には、残念ながら根強いネガティブイメージがつきまといます。
求職者がインターネットで検索すれば、「ノルマ」「長時間労働」といった言葉がすぐに見つかるのが現実です。

よくあるネガティブイメージ具体的なデータや状況
ノルマが厳しい営業職の離職率は他業種に比べて1.5倍高いという調査結果があります。
休みが少ない年間休日数が平均105日と、他業種と比較して少ない傾向にあります。
キャリアアップが難しいキャリアパスが不明確で、将来性に不安を感じる若者が少なくありません。
パワハラがある体育会系の風土が残っているというイメージを持つ求職者もいます。

これらのイメージは、優秀な人材が応募をためらう大きな障壁となっています。
たとえ自社がそうでなくても、業界全体のイメージによって損をしてしまっているのです。

課題3:慢性的な整備士不足と育成の課題

特に専門職である「整備士」の不足は、業界全体の深刻な課題です。
高度な知識と技術が求められるため育成には時間がかかり、需要に対して供給が全く追いついていません。

さらに、整備士の高齢化も進んでおり、平均年齢は45歳を超えています。
ベテラン整備士が次々と退職していく一方で、若手の確保と育成が追いつかなければ、10年後には事業の継続すら危ぶまれる事態になりかねません。

関連記事:自動車業界の人手不足 カーディーラーこそシニア層を活用すべき理由と導入手順

課題4:デジタル化への対応と採用競争の激化

顧客の購買行動がオンラインへとシフトする中で、新車ディーラーにもデジタルスキルのある人材が不可欠になっています。
SNSやWebサイトを活用したマーケティング、オンラインでの顧客対応など、新たな業務への対応が求められています。

しかし、こうしたデジタル人材はあらゆる業界で引く手あまたです。
もはや、採用競合は他のディーラーだけではありません。
全く異なる業界の企業とも、優秀な人材を奪い合う時代になっているのです。

採用ブランディングとは?基本の考え方と4つのメリット

数々の厳しい課題を前に、途方に暮れてしまうかもしれません。
しかし、こうした状況を打開する力を持つのが「採用ブランディング」です。

では、採用ブランディングとは一体何なのでしょうか。
ここでは、その基本的な考え方と、新車ディーラーが取り組むことで得られる4つの大きなメリットについて解説します。

採用ブランディングの定義:企業の魅力を伝え「選ばれる」ための戦略

採用ブランディングとは、単に求人広告を出すことではありません。
その本質を、以下の表で確認してみましょう。

用語読み意味
採用ブランディングさいようぶらんでぃんぐ企業の理念や文化、働く環境といった魅力を明確化し、ターゲットとする求職者に効果的に伝えることで、自社にマッチした人材からの応募を促進し、「選ばれる企業」になるための戦略的な活動。

つまり、給与や知名度といった条件だけで勝負するのではなく、自社ならではの「価値」「物語」で求職者の心を掴み、「この会社で働きたい」と思ってもらうための活動全般を指します。
いわば、自社の「ファン」を作る活動なのです。

新車ディーラーが取り組むべき4つのメリット

採用ブランディングに取り組むことで、企業は多くのメリットを享受できます。
特に新車ディーラーにとっては、先述した課題を解決に導く効果が期待できます。
ここでは、代表的な4つのメリットをご紹介します。

メリット1:応募の「質」と「量」の向上

企業の魅力やビジョンが明確に伝わることで、それに共感する人々が集まります。
これにより、以下のような二重の効果が期待できます。

  • 応募数の増加(量):
    • これまでアプローチできていなかった層にも魅力が届き、応募の母集団が拡大します。
  • 応募者の質の向上(質):
    • 「誰でもいいから応募してほしい」ではなく、「自社の価値観に合う人に来てほしい」というメッセージが伝わるため、入社後の活躍が期待できる、マッチ度の高い人材からの応募が増えます。

ある調査では、採用ブランディングの強化により応募数が最大で30%増加したという結果も出ています。

メリット2:入社後ミスマッチの低減と定着率UP

採用活動において、企業の「良い面」だけをアピールしていませんか。
採用ブランディングでは、仕事のやりがいだけでなく、厳しさや乗り越えるべき壁も含めた「リアルな姿」を伝えます。

求職者は入社前に企業文化や働き方を深く理解できるため、「こんなはずじゃなかった」という入社後のギャップが大幅に減少します。
これは早期離職の防止に直結し、社員の定着率向上に大きく貢献します。
結果として、採用と育成にかかるコストの削減にも繋がるのです。

メリット3:採用コストの最適化

常に求人広告サイトに多額の費用を支払い続ける採用活動は、持続可能ではありません。
採用ブランディングが成功すると、企業の魅力そのものが人を惹きつける力を持つようになります。

  • 指名応募の増加: 「〇〇(貴社名)で働きたい」という応募が増え、広告への依存度を下げることができます。
  • 費用対効果の向上: マッチ度の高い人材が集まるため、選考プロセスが効率化され、一人当たりの採用単価を抑制できます。

長期的には、広告費を削減しながらも、安定的に人材を確保できる好循環を生み出すことができるのです。

メリッ4:従業員エンゲージメントの向上(インナーブランディング)

採用ブランディングの効果は、社外だけでなく社内にも及びます。
自社の魅力を言語化し、発信するプロセスを通じて、既存の社員たちも自社の価値を再認識します。

これを「インナーブランディング」と呼びます。

  • 帰属意識と誇りの醸成: 「自分はこんなに魅力的な会社で働いているんだ」という誇りが、仕事へのモチベーションを高めます。
  • リファラル採用の活性化: 社員が自社のファンになることで、知人や友人に「うちの会社はいいよ」と自信を持って紹介してくれるようになります。

社員一人ひとりが「歩く広告塔」となり、採用活動の強力な推進力となってくれるのです。

新車ディーラーの採用ブランディング戦略 5つのステップ

採用ブランディングの重要性は理解できたけれど、何から手をつければいいのか分からない。
そんな方のために、ここからは具体的な進め方を5つのステップに分けて解説します。
このステップに沿って進めることで、計画的かつ効果的に採用ブランディングを推進できます。

Step1:ターゲット(ペルソナ)の明確化

最初のステップは、「誰に」魅力を伝えたいのかを具体的に定義することです。
漠然と「良い若者」を求めるのではなく、自社にとって理想の人物像を「ペルソナ」として詳細に設定します。

  • ペルソナ設定の項目例:
    • 基本情報: 年齢、性別、居住地、学歴
    • 価値観: 仕事に何を求めるか、どんな働き方をしたいか
    • 情報収集の方法: どんなSNSやWebサイトを見ているか
    • スキル・経験: 必須のスキル、歓迎する経験

例えば、営業職であれば「地域貢献に意欲があり、人と話すのが好きな20代前半の学生」、整備士であれば「特定のメーカーの車が好きで、技術をとことん追求したい専門学生」など、職種ごとに具体的に設定することが重要です。

Step2:自社の魅力(EVP)の再発見

次に、設定したペルソナに響く自社の魅力は何かを洗い出します。
ここで重要なのが、EVP《いーぶいぴー》(Employee Value Proposition)という考え方です。
これは「企業が従業員に提供できる独自の価値」を意味します。

  • 魅力の洗い出し方法:
    • 経営陣へのヒアリング: 創業の想いや、将来のビジョンを改めて言語化する。
    • 社員へのアンケートやインタビュー: なぜこの会社で働き続けているのか、仕事のやりがい、職場の雰囲気など、現場の生の声を集める。
    • 客観的なデータの整理: 有給取得率、平均残業時間、研修制度、福利厚生などを洗い出す。

「給料が良い」「休みが多い」といった条件面だけでなく、「風通しが良い社風」「お客様からの『ありがとう』が嬉しい」といった、情緒的な価値も重要な魅力となります。

Step3:コンセプトとメッセージの策定

Step1とStep2で明確になった「誰に」「何を」を基に、採用活動全体の軸となる「コンセプト」を策定します。
コンセプトは、採用活動における羅針盤のようなものです。

  • コンセプトの例:
    • 「クルマを通じて、地域の暮らしを豊かにする。」
    • 「最高のチームワークで、お客様に感動を届けるプロ集団。」

そして、このコンセプトを、求職者の心に響く具体的な「キャッチコピー」や「メッセージ」に落とし込んでいきます。
例えば、「最高のチームワークで~」というコンセプトなら、「一人で売るな、チームで売れ。」といったキャッチコピーが考えられます。

Step4:発信チャネルの選定とコンテンツ企画

策定したメッセージを、ターゲットに「どうやって」届けるかを考えるステップです。
各メディアの特性を理解し、効果的に組み合わせることが重要です。

チャネル特性・役割コンテンツ例
採用サイト情報の網羅性、信頼性の担保。企業の公式な顔。社員インタビュー、1日の仕事の流れ、キャリアパス、代表メッセージ、数字で見る自社紹介
SNS (Instagram, TikTok)日常的な情報発信、親近感の醸成。若年層へのリーチ。社内イベントの様子、オフィスの日常、若手社員のQ&Aコーナー
動画 (YouTube)雰囲気や人柄をリアルに伝える。テキストでは伝わらない情緒的価値の訴求。職場紹介ムービー、社員座談会、仕事のやりがいを語るドキュメンタリー
採用イベント直接的なコミュニケーション、相互理解の深化。会社説明会、職場見学ツアー、社員との交流会

これらのチャネルを通じて、一貫したコンセプトに基づいた情報を発信していきます。

関連記事:欲しい人材の採用率をアップさせるための自社メディア採用戦略とは?

Step5:効果測定と改善(PDCA)

採用ブランディングは、一度実施して終わりではありません。
市場や求職者の価値観は常に変化するため、継続的な改善活動が不可欠です。

  • 測定すべき指標(KPI)の例:
    • 応募数、応募者あたりの採用単価
    • 内定承諾率、選考辞退率
    • 採用サイトのアクセス数、ページ滞在時間
    • 入社後1年以内の離職率

これらのデータを定期的に分析し、「どの施策が効果的だったか」「どこに改善の余地があるか」を検証します。
このPDCAサイクルを回し続けることで、採用ブランディングはより洗練され、企業の持続的な成長を支える強力な武器となるのです。

『きつい・休めない』はもう古い!ディーラー業界のネガティブイメージ払拭術

採用ブランディングを進める上で、避けては通れないのが業界に根付くネガティブイメージとの戦いです。
しかし、見方を変えれば、これは大きなチャンスでもあります。
多くの企業が伝えきれていない「真の魅力」を正しく発信できれば、他社との大きな差別化に繋がるからです。

ここでは、代表的なネガティブイメージを払拭するための具体的な対策とアピール方法を解説します。

労働環境:「休みが少ない・残業が多い」への対策とアピール法

最も多くの求職者が懸念するのが、ワークライフバランスです。
「ディーラーは休みなく働く」というイメージを覆しましょう。

  • 取り組むべき対策(事実):
    • フレックスタイム制度や時短勤務制度の導入
    • 有給休暇取得の奨励(取得率の目標設定と公開)
    • ITツール導入による業務効率化と残業時間の削減
  • 効果的なアピール法(伝え方):
    • 社員の「1日のスケジュール」を具体的に紹介し、定時で帰宅している様子を見せる。
    • 若手社員の休日の過ごし方(趣味や旅行など)をインタビュー記事や動画で発信する。
    • 「年間休日数〇〇日」「月平均残業時間〇〇時間」など、具体的な数字を正直に公開する。

待遇・キャリア:「給与が低い・将来性が不安」への対策とアピール法

「営業は売れなければ給料が低い」「キャリアアップの道筋が見えない」という不安を解消します。
社員が安心して長く働ける環境であることを伝えましょう。

  • 取り組むべき対策(事実):
    • 評価制度や給与体系を透明化し、社員に公開する。
    • 成果に応じたインセンティブ制度を明確にする。
    • 資格取得支援制度や、階層別の研修制度を充実させる。
    • キャリアパス(例:営業→店長→エリアマネージャー)を具体的に明示する。
  • 効果的なアピール法(伝え方):
    • 若手社員が経験を積み、役職者へと成長していくキャリアモデルを実例で紹介する。
    • 整備士の資格取得支援制度などを活用した社員の成功体験を語ってもらう。
    • どのような研修が受けられるのか、プログラム内容を詳細に公開する。

職場の人間関係:「ノルマが厳しい・体育会系」への対策とアピール法

「個人ノルマに追われる孤独な戦い」というイメージから脱却し、チームで協力し合う文化をアピールします。

  • 取り組むべき対策(事実):
    • 個人ノルマから、店舗全体で目標を追うチーム制へと移行する。
    • 新入社員一人ひとりに先輩がつく「メンター制度」を導入する。
    • 定期的な1on1ミーティングで、上司が部下の悩みやキャリア相談に乗る機会を設ける。
  • 効果的なアピール法(伝え方):
    • 営業、整備、事務など異なる職種の社員が集う座談会コンテンツを企画し、部署を超えた協力体制を見せる。
    • 社員旅行やバーベキューといった、社内イベントの和気あいあいとした様子をSNSで発信する。
    • 新入社員とメンターの対談記事を掲載し、サポート体制の手厚さを伝える。

職種のイメージ:「整備士は汚れる・営業は大変そう」への対策とアピール法

各職種のプロフェッショナルとしての魅力や、やりがいを伝える工夫が求められます。
3K(きつい、汚い、危険)といった古いイメージを刷新しましょう。

  • 取り組むべき対策(事実):
    • 【整備士】: 最新の診断機器やリフトを導入し、クリーンで安全な作業環境を整備する。女性整備士が働きやすいよう、更衣室や休憩室を改修する。
    • 【営業】: 顧客管理システムを導入し、アフターフォローを効率化する。販売後の長期的な関係構築を評価する制度を作る。
  • 効果的なアピール法(伝え方):
    • 【整備士】: 清潔で近代的な工場の様子を動画で見せる。第一線で活躍する女性整備士のインタビューを掲載する。
    • 【営業】: 長年付き合いのあるお客様からいただいた感謝の手紙やエピソードを紹介する。「クルマを売って終わりじゃない、お客様の一生に寄り添う仕事」というやりがいをストーリーで語る。

成功事例に学ぶ!応募者を惹きつけた新車ディーラー3社の秘訣

理論や戦略だけでなく、実際の成功事例を知ることは、自社の取り組みを具体化する上で大きなヒントになります。
ここでは、採用ブランディングによって見事な成果を上げた新車ディーラー3社の事例を深掘りし、その成功の秘訣を探ります。
各社がどのような課題を抱え、どう乗り越えたのかを見ていきましょう。

事例1:株式会社ファミリー|「らしさ」の表現で新卒採用を成功

まずご紹介するのは、若者の車離れという大きな課題に対し、企業の「個性」を武器に新卒採用を成功させた株式会社ファミリーの事例です。
特に、ターゲットの心に響く一貫したビジュアル戦略が光ります。

課題と戦略:誠実で協調性のある学生に響くメッセージとは

同社の課題は、他の多くのディーラーと同様に「新卒採用での応募数確保」でした。
そこでターゲットを「4大卒かつ誠実で協調性のある学生」と明確に設定。
その上で、単なる待遇ではなく、企業の「らしさ(社員の個性を尊重し、多様性を重視する文化)」を表現し、プロフェッショナルとしての成長とチームとしての一体感を伝えるという戦略を立てました。

具体的な施策:キービジュアル・採用LP・採用ムービーの連携

同社は「GROW UP! FAMILY」という統一コンセプトの下、複数の施策を連携させました。

施策内容と工夫
キービジュアル各職種の先輩社員がプロとしてのプライドと一体感を表現。英語のキャッチコピーも使用し、先進的なイメージを演出。
採用LPファーストビューにアニメーションを使用し、訪問者を引き込む。3職種の働き方や先輩インタビュー、企業の強みを数字で示すコンテンツを掲載。
採用ムービー採用面接時の作文を若手社員が朗読するシーンから始まり、現在の仕事ぶりを交えながら成長を語る構成。視聴者が自身の入社後の姿を重ね合わせやすいよう工夫。

これらのコンテンツを通じて、求職者は入社後の成長イメージを具体的に描くことができました。

成功のポイント:視覚的訴求とターゲットへの共感

この事例の成功要因は、ターゲットである学生に響く「視覚的な訴求力」と、「この会社でなら成長できそうだ」という未来への期待感を醸成した点にあります。
コンセプトに基づいた一貫性のあるメッセージが、求職者の深い共感を呼びました。

その結果、応募数は25%増加し、採用コストを15%削減するという目覚ましい成果を上げています。

事例2:佐賀ダイハツ株式会社|地域密着と働きやすさで共感を獲得

次に、地方ディーラーが「地域密着」という強みと「働きやすさ」を武器に採用を強化した、佐賀ダイハツ株式会社の事例です。
この事例では、採用案内パンフレットというアナログな媒体が大きな効果を発揮しました。

課題と戦略:地域人材に「働きやすさ」をどう伝えるか

同社の課題は、新卒・中途を問わず「地域に根ざした人材をいかに確保するか」という点でした。
そこで、佐賀県が軽自動車普及率全国1位であることに着目し、「軽自動車に強い」という事業上の強みと、自社の「優れたワークライフバランス」という働きやすさを、一目で分かる形でアピールする戦略を取りました。

具体的な施策:数字と社員の声で語る採用パンフレット

同社が制作した採用パンフレットは、求職者が本当に知りたい情報に満ちていました。

  • 数字による客観的な情報開示:
    • 年間休日数
    • 有給休暇取得率
    • 平均残業時間
  • 社員の声によるリアルな情報発信:
    • 4つの部署からスタッフが登場し、1日の仕事の流れを紹介。
    • 仕事中(オンタイム)だけでなく、休日の過ごし方(オフタイム)も紹介し、プライベートの充実ぶりをアピール。

情報の信頼性を担保する「数字」と、共感を呼ぶ「リアルな声」を組み合わせることで、求職者の心に深く響くコンテンツとなったのです。

成功のポイント:具体的で正直な情報開示

この事例の成功の鍵は、求職者が最も知りたい「働きやすさ」という情報を、具体的な数字や実例を用いて正直に開示した点です。
これにより、企業の誠実な姿勢が伝わり、求職者の信頼と共感を獲得しました。

結果として、応募数は20%増加し、内定承諾率も10%向上。特に、社員インタビュー記事への反響が大きく、「会社の雰囲気がよく伝わった」という声が多く寄せられたそうです。

事例3:トヨタ自動車東日本株式会社|データ分析で採用課題を克服

トヨタ自動車東日本株式会社 採用サイト

最後に、大手グループ企業ならではの課題を、客観的なデータ分析によって乗り越えたトヨタ自動車東日本株式会社の事例です。
感覚や経験則に頼らない、データドリブンなアプローチが成功の鍵でした。

課題と戦略:客観データに基づき「本当に必要な情報」を届ける

同社は、トヨタグループの一員でありながら「トヨタのディーラー」と誤解されるなど、企業としての認知度の低さが課題でした。
そこで、まずはアンケート調査や社員インタビューを通じて、自社がどう見られているのか、そして自社の真の魅力は何かを客観的に把握し、そのデータに基づいて採用戦略を策定するというアプローチを取りました。

具体的な施策:アンケート調査・社員インタビュー・データ分析

同社は徹底した情報収集と分析を行いました。

  • アンケート調査: 文系・理系大学生、若手社会人、高校生の親など、5つの属性に分けて認知度や企業イメージを調査。
  • 社員・内定者インタビュー: 約60名に対し、入社理由や自社の強みなどをヒアリング。
  • ATSデータ分析: 採用管理システム(ATS)のデータを分析し、応募者の属性や選考プロセス、内定辞退の理由などを洗い出し、採用活動のボトルネックを特定。

成功のポイント:外部の視点とデータに基づいた戦略策定

この事例の最大の成功要因は、社内の思い込みを排し、外部の専門家も活用しながら、客観的なデータに基づいて採用戦略をゼロから構築した点です。
データ分析の結果、特に「地域貢献」という側面が求職者に響くことが判明し、その点をアピールすることで大きな共感を呼びました。

その結果、企業認知度は15%向上し、応募数も10%増加するなど、着実な成果に繋がっています。

採用ブランディングにかかる費用は?料金相場と始め方

採用ブランディングの重要性や成功事例を見て、具体的な実行を考え始めた方も多いでしょう。
そこで次に気になるのが「費用」の問題です。
ここでは、採用ブランディングにかかる費用の内訳や相場観、そして外注と内製のメリット・デメリットについて解説します。

採用ブランディングの費用内訳と相場観

採用ブランディングの費用は、取り組む施策の規模や内容によって大きく変動します。
主な費用の内訳と相場は以下の通りです。

施策項目費用相場主な内容
戦略コンサルティング50万円~300万円3C分析、ペルソナ設計、EVP策定、コンセプト立案など。プロジェクトの根幹を設計する費用。
採用サイト制作100万円~500万円デザイン、コーディング、コンテンツ企画・ライティング、写真撮影など。ページ数や機能によって変動。
採用動画制作30万円~300万円企画・構成、撮影、編集、ナレーションなど。実写かアニメーションか、撮影日数などによって変動。
採用パンフレット制作20万円~100万円デザイン、ライティング、印刷費用など。ページ数や紙質、部数によって変動。
Web広告運用月額10万円~ + 広告実費Indeed、リスティング広告、SNS広告などの運用代行手数料。広告費そのものは別途必要。

まずは小規模な採用LP制作から始める、あるいは既存サイトのコンテンツを充実させるといった方法であれば、コストを抑えてスタートすることも可能です。

外注(専門会社)か内製(自社)か?メリット・デメリット

採用ブランディングを推進するにあたり、専門会社に外注するか、自社で内製するかは大きな決断です。
それぞれのメリット・デメリットを比較し、自社に合った方法を選びましょう。

 メリットデメリット
外注 (専門会社に依頼)- 専門的なノウハウや最新トレンドを活用できる
- 客観的な視点で自社の魅力を引き出せる
- 高品質なクリエイティブ(サイト、動画)が期待できる
- 社内リソースを本業に集中できる
- 費用が高額になる傾向がある
- 会社の理念や文化を深く理解してもらうまでに時間がかかる
- 社内にノウハウが蓄積されにくい
内製 (自社で実施)- 費用を抑えられる
- 自社の理念や文化を深く理解した上で施策を進められる
- 施策を通じて社内にノウハウが蓄積される
- スピード感を持った意思決定が可能
- 専門的な知識やスキルを持つ人材が必要
- クオリティの担保が難しい場合がある
- 社員の業務負担が増加する
- 施策が内向きで独りよがりになるリスクがある

採用担当者がいるものの専門知識が不足している場合は、まずは戦略部分だけを専門家に相談し、コンテンツ制作は自社で行うといったハイブリッド型も有効です。

明日から使える!採用ブランディング実践テクニック

戦略や事例を学んだら、次はいよいよ実践です。
ここでは、日々の採用業務の中で、すぐにでも取り入れられる具体的なテクニックをご紹介します。
求人票の書き方一つで、応募者の反応は大きく変わります。ぜひ試してみてください。

求職者の心に響く求人票の作り方

多くの企業が見落としがちなのが、求人票の重要性です。
単なる「業務内容の告知」ではなく、「未来の仲間へのラブレター」と捉え、工夫を凝らしましょう。

  • Before(よくある求人票):
    • 【仕事内容】新車の販売、顧客管理、保険の提案
    • 【応募資格】普通自動車免許、営業経験者歓迎
    • 【給与】月給20万円~ + インセンティブ
  • After(ブランディングを意識した求人票):
    • 【この仕事のミッション】: 私たちは単にクルマを売るのではなく、お客様の人生に寄り添い、カーライフ全体を豊かにするパートナーです。あなたのミッションは、最高のチームワークでお客様に感動を届け、地域で一番愛されるお店を創ることです。
    • 【具体的な仕事内容】: 「〇〇さんのアドバイスのおかげで、最高の1台に出会えたよ」お客様からのこの一言が、私たちの最高の喜びです。ご来店されたお客様へのヒアリングから、最適な一台のご提案、ご購入後のアフターフォローまで、長きにわたる信頼関係を築いていきます。個人ノルマではなく、店舗一丸で目標を追うスタイルなので、未経験の方でも安心してスタートできます。
    • 【歓迎する人物像】: 人の話を聞くのが好きな方。チームで何かを成し遂げることに喜びを感じる方。

このように、仕事の背景にある「想い」や「やりがい」、職場の「文化」を伝えることで、求職者の共感を呼び、マッチ度の高い応募に繋がります。

企業の魅力が伝わる採用サイト/LPの必須コンテンツ

採用サイトや採用LP(ランディングページ)は、求職者が企業の情報を深く知るための重要な接点です。
以下のコンテンツは、企業の魅力を伝え、求職者の不安を解消するために最低限盛り込みましょう。

  1. 代表メッセージ:
    • 創業の想いや事業にかける情熱、未来の仲間への期待を、経営者の言葉で語ります。
  2. 社員インタビュー:
    • 若手、中堅、ベテラン、異なる職種の社員に登場してもらい、仕事のやりがいや入社理由、職場のリアルな雰囲気を伝えます。
  3. 数字で見る〇〇(会社名):
    • 「平均年齢〇〇歳」「男女比率〇:〇」「有給取得率〇〇%」など、企業の客観的なデータをインフォグラフィックで見せ、働きやすさや特徴を伝えます。
  4. キャリアパス紹介:
    • 入社後、どのようなステップで成長していけるのかを具体的に示し、将来への安心感を与えます。
  5. 1日の仕事の流れ:
    • 職種ごとに、出社から退社までの具体的なスケジュールを紹介し、働き方をイメージしやすくします。

差がつく!最新トレンドの活用法

他社と差別化を図り、特に若手人材にアプローチするためには、最新のトレンドを積極的に取り入れることも有効です。
ここでは、すぐに始められる3つのトレンド活用法をご紹介します。

動画コンテンツ(職場紹介・社員インタビュー)

テキストや写真だけでは伝わらない、職場のリアルな雰囲気や社員の人柄を伝えるには、動画が最も効果的です。

  • 職場紹介動画: スマートフォンで撮影した簡単なものでも構いません。ショールームや整備工場を歩きながら紹介する「オフィスツアー動画」は、求職者に職場の雰囲気を直感的に伝えます。
  • 社員インタビュー動画: テキストのインタビュー記事と合わせて、語っている様子を動画で見せることで、言葉の説得力や人柄がより深く伝わります。
  • 先進技術の活用: VR/ARを活用した職場体験コンテンツは、求職者に強烈なインパクトを与え、応募意欲を高める効果が期待できます。

SNS(Instagram, TikTok)での発信

特に若手人材へのアプローチには、彼らが日常的に利用するSNSの活用が欠かせません。
採用サイトのような堅い情報だけでなく、企業の「素顔」を見せることがポイントです。

  • Instagram:
    • 社内イベントやランチの様子、社員のオフショットなどを投稿し、職場の楽しげな雰囲気を伝える。
    • ストーリーズの質問機能を使って、就活生からの質問にリアルタイムで答える。
  • TikTok:
    • 社員の日常や仕事のあるあるネタなどを、面白おかしいショート動画で紹介する。
    • 難しいと思われがちな専門知識を、分かりやすく解説する動画も人気です。

関連記事:ディーラー若手営業の採用を成功させるには?Z世代が応募したくなる求人の作り方

【自動車業界特化】採用ブランディングのプロに相談する選択肢

ここまで採用ブランディングの戦略やテクニックを解説してきましたが、「専門的なノウハウがない」「日々の業務が忙しく、採用活動にそこまで手が回らない」と感じる経営者様も多いかもしれません。
そんな時、頼りになるのが採用ブランディングの専門会社です。

しかし、一般的な制作会社やコンサルティング会社では、自動車業界特有の課題や文化を深く理解しているところはほとんどありません。
そこで、選択肢の一つとして紹介したいのが、私、野瀬が行っている自動車業界に特化した採用マーケティングシステムです。

自動車業界に特化した採用コンサルタント 採用マーケティングシステム 野瀬貴士

▼詳しく見てみる
https://recruit.carmarke.com/

なぜ専門コンサルが必要?野瀬貴士の3つの強み

数ある採用支援サービスの中で、なぜ私の採用マーケティングシステムが新車ディーラーにとって最適な選択肢となり得るのか。
その理由は、他社にはない3つの明確な強みにあります。

強み1:業界特化の深い知見と「会社の想い」を軸にした戦略設計

私、野瀬が運営する「採用マーケティングシステム」の最大の強みは、17年間の中古車販売店経営で培った、自動車業界への深い知見です。
ディーラービジネスの構造、職種ごとの業務内容、業界特有の採用課題を肌で理解しているからこそ、机上の空論ではない、現実的で効果的な戦略を立案できます。

また、同社は高給与や好待遇といった条件面だけをアピールする採用を良しとしません。
本当に定着し、活躍する人材を惹きつけるのは「会社の想い」であるとし、企業の理念やビジョンを明確化し、それに共感する人材を集めるためのコンセプト設計を最も重視しています。

強み2:Indeed最適化と企業の魅力を引き出すコンテンツ制作力

業界知識だけでなく、具体的な集客ノウハウも持ち合わせています。
特に、多くの求職者が利用するIndeedのアルゴリズムを熟知しており、ターゲットに響く求人票を作成・最適化することで、応募数を劇的に増加させます。

さらに、求職者の心を動かす採用サイトや動画の制作も得意としています。
単なる情報提供ではなく、社員のインタビューや日常業務の「ありのまま」の様子をリアルに伝えるストーリーテリングを取り入れることで、求職者に「ここで働く自分」を鮮明にイメージさせ、入社後のミスマッチを解消します。

強み3:採用して終わりじゃない。定着を見据えた継続的なサポート

多くの制作会社は、サイトや動画を作って納品すれば業務完了です。
しかし、私、野瀬が運営する「採用マーケティングシステム」は違います。
採用後の定着率向上までを見据え、長期的な視点で企業の成長を支えるパートナーとして伴走します。

具体的には、採用サイトへ新しいコンテツを継続的に追加したりIndeed広告の運用代行などの手厚いサポートを提供。
これにより、常に応募者が待機しているような状態、いわゆる「人材のダム」を形成することが可能となり、人材が必要になったらすぐに採用することが出来るようになります。

この「採用マーケティングシステム」は、短期で雇うとか、とりあえず1人欲しいとか、そういう会社には必要ありません。
その代わり、1年2年とかではなく長期で5年10年と会社を一緒に大きくしたいとか、右腕になるような人材を獲得したいと思われているのであれば、「採用マーケティングシステム」は最適な選択肢となります。

具体的な料金プランとサービス内容

採用マーケティングシステムは、企業のニーズや予算に合わせて選べる3つのプランを用意しています。
自社の状況に合わせて、最適なプランを選択することが可能です。

プラン名システム導入費用(税込)主な対応範囲こんな企業におすすめ
ライトプラン1,500,000円~企画、採用サイト(LP形式)、Indeed最適化まずは基本的な採用活動を始めたい。特定の職種に特化して効率的に応募を集めたい。
スタンダードプラン2,700,000円~企画、採用サイト(コーポレートサイト形式)、Indeed最適化、採用動画制作企業の魅力をより深く伝えたい。多様な職種で採用を強化し、応募の質を高めたい。
プレミアムプラン3,800,000円~すべてカスタマイズ可能(サイト、動画、運用サポートなど)独自の採用戦略を構築したい。高度なブランディングで、競合と圧倒的な差をつけたい。

詳細なサービス内容や費用については、企業の課題をヒアリングさせ頂いた上で個別に見積もり・提案を行っています。

導入までの流れと

実際にサービスを導入する際の、具体的な流れは以下の通りです。

  1. お問い合わせ: まずはお問合せフォームから気軽に相談。
  2. ヒアリング: ZOOMまたは訪問にて、現状の課題や求める人材像を詳しくヒアリング。
  3. 提案・見積もり: ヒアリング内容に基づき、採用コンセプトや具体的な施策を提案(無料)。
  4. 契約: 提案内容に合意後、契約締結。
  5. コンテンツ準備: 企業の魅力を伝えるメッセージや素材を準備。
  6. 動画撮影: (スタンダード・プレミアムプラン)プロのチームが企業の魅力を最大限に引き出す動画を撮影。
  7. サイト制作・確認: ワイヤーフレームとデザインを確認しながら、サイトを構築。
  8. テスト・リリース: テスト環境で動作確認後、サイトを一般公開。
  9. 運用・改善: 公開後も効果測定を継続し、採用効果の最大化を目指す。

採用マーケティングシステムを詳しく見てみる
↓↓↓
https://recruit.carmarke.com/

まとめ:採用ブランディングは会社の未来を創る経営戦略

本記事では、新車ディーラーが直面する厳しい採用課題から、その解決策となる採用ブランディングの具体的な戦略、成功事例、そして実践的なテクニックまでを解説してきました。

重要なのは、採用ブランディングが単なる小手先の採用テクニックではないということです。
それは、「自社は何のために存在するのか」「社員に何を提供できるのか」という根源的な問いに向き合い、企業の理念や文化を再構築する、未来に向けた経営戦略そのものなのです。

この記事を読んで、少しでも採用ブランディングに可能性を感じていただけたなら、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。
まずは、経営者であるあなた自身が、自社の魅力について社員と語り合うことから始めてみてはいかがでしょうか。
その対話の中にこそ、未来の素晴らしい仲間を惹きつける、貴社だけの物語の種が眠っているはずです。